第29話 降ってわいた話たち

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 勿忘草やリナリアのお花はもうないけれど、私は無意識にそれらが植えられていた場所を最初に探していた。  今は一部を空けて、倉じいが好きだというニチニチソウの花が植わっている。 「莉亜さん」  すると、少し遠くから四季さんの声がした。  みんながいるけど静かだから、私は声を張ることなく返事をする。 「こっちってまだ見てない?」 「そうですね。水道付近も見てないです」  私は五号室側から時計回りに見ているから、四季さんにはリビング側から時計回りに見てもらうことにした。  ちょうど間に水道があって、その近くには土とか肥料とかを置いておくちょっとしたスペースがあるけれど、そこはあとで考えよう。 「縁の下にはないわよねぇ」  今度は静子さんが声をかけてきた。  どうやら扉周辺にはなかった模様。 「考えもしなかったです。でも、貼り付けることはできますね」 「かなちゃんがそんな罰当たりなことはしないと思うけど、一応見てみようかしらね」  縁の下には人が入れるだけのスペースはあるけれど、ここはどうだろう。  あるとしたらダルマさんがさかさまになってるわけだし、静子さんの言う通り罰当たり感がすごい。
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