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「いやぁ、最後はヒヤヒヤしたよ」
「ほんとほんと。姉ちゃんも兄ちゃんもすぐ近くまで行ったもんね」
「え、そうなの? 全然わからなかったけど」
「見えるようになってるんじゃないの?」
「見えるっちゃあ見えるよな」
泥棒チームがこぞって視線を向けているほうを見る。
それは中庭のほぼ真ん中で、マリーゴールドが咲き誇っているところだ。
「この辺ですか?」
誰も動こうとしないから、私が探すことにした。
みんなの視線を頼りに、少しずつ中央に近づく。
「莉亜、もうちょっと右」
「そして足元だ」
このエリアはしっかりとした花壇じゃなくて、不揃いの石で囲むようにして植物のエリアと人の通り道を分けている。
倉じいに言われてかがんでみたけれど、マリーゴールドと土しか見えない。
「埋まってるわけじゃないよね?」
「おー、なかなか気づかれない」
「ここからでも見えるんだよね?」
「僕たちはあそこにあるってわかってるから言ってるだけで、目がよくないと見えないな」
きっともう目の前にあるはずなのに、全然わからない。
誰も私を急かそうとはしないけれど、背中がじんわりと汗をかいているのを感じる。
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