第29話 降ってわいた話たち

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「莉亜、石の上だよ」 「石の上?」 「小さな黒いものがあるだろ」 「黒……?」  確かに、大きな石の上に小さくて黒い石みたいなものがある。  形はダルマさんっぽいけど、真っ黒だよ。 「え、これ? あっ!」  半信半疑でその黒い石を手に取ってみると、手触りがちょっと変だということに気づいた。  この感触、そういうことだったんだ。 「見つかったみたいだな」 「そこにあるって言われてもわからないって、どういうことかしら?」  私は悔しい気持ちとあっぱれという気持ちを半々くらいに抱えて、真っ黒にされたダルマをみんなのもとへ運んだ。  これじゃわからないよ。 「こんな姿になってました」 「あら? 確か赤かったはずよね?」 「まさか、このために黒く塗りつぶしたの?」  カナンならやりかねないような気もするけれど、実際はそうじゃない。  私から種明かしをするのも癪だから、とりあえず四季さんにも持ってもらうことにする。
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