第27話 夏の力

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「あったあった。すごい、いっぱいある!」 「ほんとだ。人もたくさん……」  ここにいる人たちはきっと、海とかプールに行くことを心待ちにしている人ばかりなのだろう。  私だって嫌々連れてこられたわけじゃないんだから、しっかり参加意識を持たないと。 「さぁ、莉亜!」 「うん?」  満面の笑みを見せるカナンと、あいまいな笑顔を浮かべる私。  参加意識を失ったわけじゃないけれど、積極的に動くつもりもない。 「どれがいい?」 「私は全然わからないから、まずはカナンが好きなものを選んでよ」  カナンに選んでもらおうかとも思ったけど、変なものを勧められたときに断れないからやめておく。  同様の理由でおそろいにしようとも言わない。  カナンが吟味している間に他のお客さんの動きにも注目して、とにかく無難なものを選びたい。 「どうやって選べばいいんだろう?」 「サイズだけ間違えないようにして、あとは好きなものでいいんじゃない?」  形やブランドなど、いろいろカテゴライズされているけれど、どれがカナンに似合うかはまったくわからない。  買う前に試着はするんだろうけど、そんなに何着も試したくはない。
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