密室会談

1/1
前へ
/1ページ
次へ
岸田「国会議事堂まで」 運転手「どこの?」 岸田「東京に国会議事堂はいくつもあるのかね」 運転手「吉原のソープで国会議事堂ってあるし、北千住のキャバクラにも」 岸田「永田町だよ。私を誰だと思ってるんだね」 運転手「きんに君?確か名字は、中山」 岸田「違う!何を見てるんだね君は。岸田だよ」 運転手「童貞めがねの?」 岸田「増、税、めがね!子どももいる」 運転手「あー、あのバカ息子」 岸田「君ね、口を謹みなさい。運転手の分際で」 運転手「いやでもみんなバカ息子って言ってますよ。言ってないのはうちで飼ってる猫のジョンくらいで」 岸田「猫につける名前かね。それに世間で言ってるとしてもだ。親には言わんでくれ、まったく。早く国会議事堂へ出して」 運転手「何しに行くんですか、また暇つぶし?」 岸田「誰が暇つぶしだね。仕事だよ、仕事。決まってるだろ」 運転手「バカ息子は?」 岸田「知らん」 運転手「またパリかな」 岸田「そんなことどうでもいい、クルマ出して!」 運転手「吉原でしたっけ?」 岸田「永田町!」 運転手「中山さんでしたっけ?」 岸田「うるさい!いま仕事中だ」 運転手「ケータイで?」 岸田「悪いかね」 運転手「パソコンじゃないんだ」 岸田「あんな重いもの必要ない。ケータイで充分」 運転手「ケーリンやってます?」 岸田「やってない!そんな暇あるか。仕事だと言ってるだろ。もう話かけんでくれ」 運転手「一曲歌っていいですか」 岸田「歌わんでいい」 運転手「Bling-Bang-Bang-Born Bling-Bang-Bang-Born♪」 岸田「うるさい!歌うなって言ったろ。しかも私が一番嫌いな曲だ」 岸田「あれま。これ嫌いですか」 岸田「みんな歌っているから無意識に頭の中でリフレインするんだ。腹立つわぁもう」 運転手「確かに。やっと意気投合」 岸田「してない」 運転手「にぎりめし食います?」 岸田「は?」 運転手「朝、トイレから出てすぐ握ったやつですけど」 岸田「食うか!手を洗ったとしても食うか」 運転手「洗ってないね」 岸田「・・・君ね、無礼にも程があるぞ。会社と名前控えたからな」 運転手「ありがとうございます!」 岸田「礼を言うとこじゃない!」 運転手「私の幼馴染にも岸田ってバカいましてね、あいつほんとにバカだったなぁ」 岸田「フン、そいつと一緒にせんでくれ」 運転手「でもね、私が握ったにぎりめしを美味そうに食ってくれて、いい奴だったんですよ。でも去年、心筋梗塞で」 岸田「・・それはご愁傷様」 運転手「手術して元気になっていまはソープ通いですわ」 岸田「生きてるんか。一瞬でも同情して損したわ」 運転手「岸田さんもそろそろお迎えですか」 岸田「おい、縁起でもないこと言うな。私はピンピンしとる!」 運転手「じゃあ、やっぱいまのうちに吉原行かなくちゃ」 岸田「吉原に行かんでも赤坂がある」 運転手「えっ、赤坂にソープあるんですか!」 岸田「ここだけの話だが、高級ソープ。会員制だ。君は永遠に行けんとこだよ、ふはは」 運転手「えーっ!紹介してくださいよ、私とキッシーの仲じゃないですか」 岸田「初対面!キッシー言うな」 運転手「一目惚れって、知ってます?」 岸田「気持ち悪いな」 運転手「しょうがない。じゃあそろそろ出発しまーす」 岸田「してなかったんかーい!!」          【了】
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加