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岸田「国会議事堂まで」
運転手「どこの?」
岸田「東京に国会議事堂はいくつもあるのかね」
運転手「吉原のソープで国会議事堂ってあるし、北千住のキャバクラにも」
岸田「永田町だよ。私を誰だと思ってるんだね」
運転手「きんに君?確か名字は、中山」
岸田「違う!何を見てるんだね君は。岸田だよ」
運転手「童貞めがねの?」
岸田「増、税、めがね!子どももいる」
運転手「あー、あのバカ息子」
岸田「君ね、口を謹みなさい。運転手の分際で」
運転手「いやでもみんなバカ息子って言ってますよ。言ってないのはうちで飼ってる猫のジョンくらいで」
岸田「猫につける名前かね。それに世間で言ってるとしてもだ。親には言わんでくれ、まったく。早く国会議事堂へ出して」
運転手「何しに行くんですか、また暇つぶし?」
岸田「誰が暇つぶしだね。仕事だよ、仕事。決まってるだろ」
運転手「バカ息子は?」
岸田「知らん」
運転手「またパリかな」
岸田「そんなことどうでもいい、クルマ出して!」
運転手「吉原でしたっけ?」
岸田「永田町!」
運転手「中山さんでしたっけ?」
岸田「うるさい!いま仕事中だ」
運転手「ケータイで?」
岸田「悪いかね」
運転手「パソコンじゃないんだ」
岸田「あんな重いもの必要ない。ケータイで充分」
運転手「ケーリンやってます?」
岸田「やってない!そんな暇あるか。仕事だと言ってるだろ。もう話かけんでくれ」
運転手「一曲歌っていいですか」
岸田「歌わんでいい」
運転手「Bling-Bang-Bang-Born Bling-Bang-Bang-Born♪」
岸田「うるさい!歌うなって言ったろ。しかも私が一番嫌いな曲だ」
岸田「あれま。これ嫌いですか」
岸田「みんな歌っているから無意識に頭の中でリフレインするんだ。腹立つわぁもう」
運転手「確かに。やっと意気投合」
岸田「してない」
運転手「にぎりめし食います?」
岸田「は?」
運転手「朝、トイレから出てすぐ握ったやつですけど」
岸田「食うか!手を洗ったとしても食うか」
運転手「洗ってないね」
岸田「・・・君ね、無礼にも程があるぞ。会社と名前控えたからな」
運転手「ありがとうございます!」
岸田「礼を言うとこじゃない!」
運転手「私の幼馴染にも岸田ってバカいましてね、あいつほんとにバカだったなぁ」
岸田「フン、そいつと一緒にせんでくれ」
運転手「でもね、私が握ったにぎりめしを美味そうに食ってくれて、いい奴だったんですよ。でも去年、心筋梗塞で」
岸田「・・それはご愁傷様」
運転手「手術して元気になっていまはソープ通いですわ」
岸田「生きてるんか。一瞬でも同情して損したわ」
運転手「岸田さんもそろそろお迎えですか」
岸田「おい、縁起でもないこと言うな。私はピンピンしとる!」
運転手「じゃあ、やっぱいまのうちに吉原行かなくちゃ」
岸田「吉原に行かんでも赤坂がある」
運転手「えっ、赤坂にソープあるんですか!」
岸田「ここだけの話だが、高級ソープ。会員制だ。君は永遠に行けんとこだよ、ふはは」
運転手「えーっ!紹介してくださいよ、私とキッシーの仲じゃないですか」
岸田「初対面!キッシー言うな」
運転手「一目惚れって、知ってます?」
岸田「気持ち悪いな」
運転手「しょうがない。じゃあそろそろ出発しまーす」
岸田「してなかったんかーい!!」
【了】
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