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今日もまた、立石は黙ったまま美徳の手を引いてあの神社の鳥居をくぐって舗装されていない道を歩いていく。
明かりもつけずに、、、、、、。
そしてまた立ち止まり、無言の時間がはじまる。
「この時間、怖いんだよね、、、。立石は話さないし、周りは真っ暗だし、、、」そんなことを美徳は考えていた。
その一瞬だった。美徳の脳裏に、何故か立石から手を引かれている筈の自分の手首から下が無いように見えた。
美徳「ひっ、、、」
声が漏れた瞬間、立石の意識が戻ったように美徳の方に振り返り、いつもの屈託のない笑顔を見せて立石は「帰ろう」と言った。
美徳は家に帰った後もあの映像が忘れられなかった。
美徳「あれ、何だったんだろう。ちゃんと手、あるし、見間違いかな、、、」
次の日もまた、美徳と立石はあの神社の奥に行って佇んだ。今度は両手共見えない、その次の日は片足、更に次の日は両足、、、。
見えなくなる範囲は日に日に増えていった。
不思議なことに、立石が振り向くと見えるようになっていた。
満月のある日、また美徳はいつものように立石と神社の奥に行ってある場所で立ち止まる。立石はまたいつものようになにも話さず、そこに立ち止まったままだ。
美徳「もういい加減、置いて帰っちゃおうかな、、、」その時、美徳の頭にものすごい激痛が起きる。あまりの痛さに美徳はその場にすわりこむ。痛みの中で、立石の屈託のない笑顔がちらつく。
どれくらいだっただろうか、美徳が頭を抱え込んだ手を下におろすと、そこには真っ赤に血塗られた手と、下には包丁が見えた。
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