花束

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「あ、嵐山さん!?」  まさかその場に嵐山龍馬が居合わせていたなど思いも寄らなかった由宇は驚き、腰が抜けた様にその場に座り込んだ。ふと見遣ると玄関先には深紅の花弁が舞い散っていた。 「立てますか?」 「は、はい」  手を差し伸べると由宇はその手を取って立ち上がり嵐山龍馬の胸に飛び込んだ。 「こ、怖かった」 「はい」 「怖かったです」 「怖かったんですね」 「はい」 「怖かった」  由宇を抱き締めたその手には深紅の薔薇の花束が抱えられていた。甘くほろ苦い香を嗅いだ由宇が驚きその顔を見上げると嵐山龍馬は少し情けない面差しで「もう2度としません、申し訳ありませんでした」と謝罪の言葉を口にし力強く抱き締めた。 「お部屋に入っても宜しいですか」 「どうぞ」 心の声一同(はぁーーーーーーーー!)  そして正座をした嵐山龍馬はリビングの床に額を擦りつけた。 「もうっ!申し訳ございませんでした!」 「はぁ」 「もう2度と金輪際あのような馬鹿げた事は致しません!」 「はぁ」 「出来心でした!」 「はぁ、さいざんすか」 「何回なさったんですか」 「さっ、3回です!」 「正直に言わないで下さい!」 「ご、ごめんなさい!」  床に額を擦り付けたその姿を見下ろした由宇は既視感を覚えた。
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