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「ただいま」
姫花は、帰ってくるなり大きなリュックをドカっと階段の前の床に置いた。そして「疲れた〜」と言ってソファーに倒れこむ。
「ご飯は? テスト期間なのに、こんなに遅くまで……何してたの? 連絡もよこさないで心配するでしょ」
私の小言に、姫花は気怠そうに「んー」と返事とも言えない声を漏らす。
時刻はすでに二十一時を回っていた。
姫花が帰宅する時間は、いつもは十九時半から二十時の間だ。それ以降、遅くなるなら連絡をするという約束で、特に門限は決めていなかった。
それなのに、今日は連絡がなく、『今どこ』のメッセージに既読すらつかなかった。しびれを切らしてかけた電話もつながらず、何か事故に巻き込まれたのでは? と、心配になっていた所だった。
もう、子供じゃないんだから……と思う反面、何かあったのではないかと心配になるのが親心というもの。
私は、帰宅した姫花の姿を見るなりホッと肩の力が抜けたが、それと同時に腹が立った。
夫からも「今日、急に飲み会になった」と連絡があり、そのこともあって私は虫のいどころが悪かったのだ。
「ちょっと! 姫花、聞いてるの? 約束も守らないで、心配かけておいて、何なのその態度⁉︎」
私が強い口調で咎めると、姫花は「うるっさいなぁ」と、勢いよくソファーから体を起こし、ドスドスとわざとに足に力を込めて階段を上っていった。
私はそんな姫花の態度に、さらに苛立ちを覚えて姫花の後を追い、階段をのぼる。
「ちょっと、待ちなさい! 話終わってないよ!」
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