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「しつこいな! もう、寝るし……ほっといて!」
階段を上りきり、姫花は自室の扉の前でそう喚いた。
「明日もテストでしょう? 大丈夫なの?」
私がそう言うと、姫花は少しだけ振り向いてキッと鋭い視線をこちらに向けた。
「私にだって色々あるの! 勉強、勉強って、ちゃんとやってるよ!」
姫花はそう叫んで、姫花の肩に伸ばしていた私の手を振り払った。
──あっ!
私はその瞬間、反射的に後退りをしてしまい、階段を一段踏み外してしまった。私は咄嗟に腕を回して、後屈した上体を立て直そうとするが、その動作も、見える景色全てがスローモーションに見えた。
姫花の焦り顔。差し出された手。階段のダウンライト……
ガタガタガタタタン
大きな音と、腰の鈍い痛みと、何かに押しつぶされたような重圧を感じる。
「イタタタ……」
「いったぁ~い!」
私は姫花と一緒に階段から転げ落ちた。
◇
そういえば、昨夜、そんな事があったのだ。
――あれ? あれから、どうしたんだっけ?
「私のせいじゃないからね!」って、姫花は部屋に籠って、私もそのまま腰が痛くて早々に寝たんだっけ……?
どういうわけか、昨夜、階段から落ちた後のことを思い出そうとしても、ひどく朧気で記憶が曖昧だった。
もしかして、姫花と一緒に階段から落ちたことが引き金になったって……こと?
「ママってば、どうしてこんなに腰が痛いの! 動くとつらいよー」
私に向かってそう嘆いている私の腰に湿布を貼るのを手伝いながら、気づけば私は物思いにふけっていた。
――どうしよう? 元に戻るにはどうしたらいいの……?
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