1/4
前へ
/11ページ
次へ

 「遅れました~……」  私は、シンと静まり返った教室にコソコソと忍び込むように入る。  「(とどろき)? 珍しいな。もうテスト開始するとこだぞ。早く席につけー」  白髪のイケオジ先生が、呆れ顔で私を迎えてくれた。  「はい」と返事をして、私はそそくさと姫花に聞いていた窓際の後ろから二番目の席に着いた。  どうにか間に合った~……。  私はフゥっとため息を一つついた。  クラス中が少しだけざわつき、皆が私の方に「やらかしたね」という同情のような、それでいて面白がるような、ニヤついた顔を向けている。  姫花との話し合いの結果、「いつ元に戻れるかわからないし、テストは受けたほうがいいね」っていうことになって、私は慣れない制服のネクタイに苦戦し、乗り慣れないバスで登校することになった。さらに学校に着いてからも、迷路のような校内で迷子になって、今やっとの思いで一年C組の教室にたどり付くことができたのだ。  『挨拶以外、誰ともしゃべらない』『目立たない』『テストを受けたら寄り道せずにすぐに帰ってくる』と、家を出る前に姫花と約束を交わした。  若干目立ってしまったかな? と、少し気にはなったが「慣れないことだらけだもん仕方ないよね」と、心の中でペロっと舌を出した。  もちろん約束を守るつもりだけれど、話しかけられたり、絡まれた場合はどうしたらいいの?  いや、今はそんなことよりも、まずテストを乗り切ることが先決だ。  「では、始め!」  イケオジ先生の号令で、クラスの皆が一斉に配られていたテスト用紙をペラリとめくる。静かな教室に、カリカリカリカリと各々にペンをはしらせる音が響き渡った。  
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加