縋る

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私と田原くんとの連絡手段は、電話か携帯キャリアのEメールだけ。 RINEとかのメッセージアプリなら表示はツリー形式で既読未読が分かりやすいので、私としては他の人と同じように、田原くんとの連絡手段もRINEを使いたいんだけど、田原くんは私とのやりとりでは、頑なにRINEを使おうとしない。 以前、私との連絡手段としてRINEを使わない理由を聞いたことがあるんだけど、よく芸能人のゴシップネタなどで、RINE画面のスクショが流出してバレてるので、いつか流出するんじゃないかと思うと怖いって理由だった。 携帯キャリアのEメールだって、漏れる時は漏れるんだし、そもそも私がバラさない限りなく流出する可能性はない訳で。 なので、そこを気にしても仕方ないとは思うんだけど、でもまあ彼が嫌なら仕方ない。 彼自身RINEを使っていないわけじゃないみたいなので、普段大っぴらに使ってるRINEと、私専用の携帯キャリアのEメールとを使い分けることで、奥さんと間違えて送信してしまうリスクを避けてるんだろうな。 --- それが田原くんからのメールだと気づいた瞬間。 私は坂口から見えないように、慌ててスマホを両手で抱え込んで胸に押し付けていた。 “裏返しといて良かった…” こんな真っ昼間に送ってこなくても…と、つい愚痴が頭に浮かぶ。もちろん裕美子の前なので声には出さない。 角度的に、坂口にはポップアップしたメールの送り主名は見られてはいないはず。 でも私が誰かと一緒にいる可能性の高いランチの時間帯にメールを送ってくるなんて、田原くんも余りにも気が利かない。 というか、今まではこんな時間帯にメールを送ってきてことはなかったのに。
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