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そんな感じで入社した私は、最初から尖っていた。
“私はこんなとこにいるべき人間じゃない”と、少し舐めていた新入社員時代。
同期採用の総合職は全体で二十人。その内女性は私を入れて五人。
その総合職の二十人の卒業大学を見比べてみると、私が“負けた”と思うような大学出身者は全体でたった三人。
“こんなもんか”
でも、そんな楽勝気分でいれた期間は、そんなに長続きしなかった。
今の私の歳、三十四歳でマネージャーの肩書きが付いているのは、同期の男性全員と、女性では私だけ。
それだけ見たら、恵まれていると言えるのかもしれないけど、私がマネージャーになれたのは全体で十二番目。
初発でマネージャーになった同期の男性から二年遅れでの昇格だった。
自分で勝手に設定していた“同期四天王”の中では、当然最後の昇格だった。
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「田原マネージャー、おはようございます」
坂口の声で我に返り、もはや読んでもいなかった新聞から顔を上げると、同じ営業部の隣のチームの彼が出勤し、自席に向かっているところだった。
彼は歩きながらにこやかに他の社員達とも挨拶を交わしているけど、私以外には不自然さを感じさせない自然さで、いつものように私から離れたルートを歩きながら自席に向かっている。
私もチラッと目をやっただけで、彼とは声をかけることもなく再び新聞に目を落とした。
彼、田原マネージャーは、私の二つ年下で、彼の同期の中では一番最初にマネージャーに昇進した、旧帝国大学出身の弊社エリート中のエリート。
同期と二年遅れでマネージャーに昇格した私とは、マネージャー研修の同期でもある。
そして。
私の部屋で会う関係になって、もう一年になる、私にとって特別な男性だ。
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