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いつからそんな関係になったのかは、漠然としていて正確に覚えていない。
いや自分で認めたくなくて、フェイクを混ぜた記憶にさらにフィルターを掛けているだけで、全く覚えてない訳ではない。
かつて私マネージャーになってすぐの頃。仕事で私が信じられない初歩的なミスをして落ち込んでいた時。
私のことを親身になって慰めてくれたのが彼で、それからの関係なのは間違いない。
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同期がまだ誰もマネージャーに昇格していない頃まで。
私はかつてのチンケなプライドを守って、肩肘張って生きてきた。
仕事では同期で大きな成果をあげた男性と遜色ない仕事をこなしてきたと自負していたし、“仕事のできないヤツ”と私が見切った上司以上に、自分自身働いてきたという自信もあった。
でも、なんとなくそれだけでは越えられない天井的なナニカを感じ始めたのもその頃。
二年遅れでマネージャーには昇格できたものの、それと前後するかのように、今まで気にならなかった“声”が聞こえるようになってきた。
【アイツ空気読めんよなあ…】
【女のくせに生意気だよな】
【女じゃなくて男の責任者連れてこい】
そんな声を跳ね返そうと必死になり、冷静さを失いつつあった私が仕事で大きなミスをするのは、それから間もなくのことだった。
あの日。
私は、自分のチームが受けた仕事で、クライアントとの見積書のラリーをイライラしながら繰り返していた。
修正箇所だけ直してそれ以外はコピペで済まそうとコピへを繰り返している内に、項目の加除で単価欄がズレてしまったことに気づかず、100万円と書くべき欄に1万円と書いてしまい、会社に大きな損失を出させてしまった。
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