63人が本棚に入れています
本棚に追加
【女のくせに手柄を焦るから…】
【やっぱり女のマネージャーはダメだ…】
それまでは陰口として言われているだけで、自衛手段とし“幻聴だ”と思い込んで聞こえないふりをしてきた、同期の男性陣や年上のヒラ社員の男性から発せられる心無い一言。
その“声”はその時以降、現実の声となって、私の胸に直接突き刺さるようになった。
出世競争では私のライバルにはならないはずの同期の女の子達も、“巻き添えはごめん”とばかりに遠巻きに見ているだけで、私に近寄ろうともしない。
そんな時、唯一声をかけ慰めてくれたのが、マネージャー研修で一緒だった、二つ歳下の彼、田原くんだった。
「大丈夫?辛かったら全部吐き出したいいよ。
胃の中のものだけじゃなくて、心に溜まりに溜まってる“オリ”も…さ」
やけ酒で酔い潰れた私に、そう言って慰め、肩を貸してくれた田原くん。
そうやって慰めてもらう前。
彼について私が知っていたのは、私より二つ年下の、旧帝大出身のエリートいうことと、実は顔もそこそこ好みだということのみ。
奥さんと生まれたばかりの娘がいることは、こんな関係になった後に知った。
奥さんと子供がいることを知って以降。
彼のプライベートに関する情報は、極力耳に入らないようにしている。
いや、むしろ絶対知りたくない。
最初のコメントを投稿しよう!