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結局、私にとって都合のいいオトコってだけじゃなくて、彼にとっても、私は“都合のいいオンナ”なんだよね…。
そこまで分かっていながら、ずっと別れられずにいた。
友梨に説教されたとしても。
お互いにカラダだけの不適切な関係だと分かっていても、今の私の心にできた大きな穴を埋めてくれるのは、彼しかいない。
会社で肩肘張って戦う私を優しく包んでくれるだけじゃなく、私のことを一人の社会人、そして一人のオンナとして扱ってくれるのは、彼しかいないんだ。
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回答ともつかない私の答えをどう思ったのか。
いつしか火のついたメンソールを指に挟んだ友梨が、煙を大きく一つ吐く。
「念のため確認するけど、絵梨も、彼を奥さんから奪い取るように行動するつもり…、そんな覚悟、まではないんでしょ?」
「そんなこと、考えたこと…ないよ。
彼も多分そんなつもりも無いし…」
「未来もないし、自分から動いて幸せになるつもりもない。
そんなナイナイ尽くしじゃ、付き合ってる意味、ゼンゼンないじゃん!
姉ちゃ…じゃなかった、絵梨!
もういい加減に目を覚ましなよ!
人として最低だよ?
そんな姉を持つ妹の身にもなってよ!」
友梨は涙を浮かべながら、声を荒げた。そして大きく深呼吸しながら、睨むかのように私を見つめ、私の返事を待っている。
友梨の気持ちも痛いほど分かる。
仮にもし友梨自身が道ならぬ恋をしているとして、私がそれを知ったら、方法はどうであれ、私も止めるように言うだろう。
でも妹にはそんな理性が働く私自身、自分の降りかかる問題については、理性もどこかに行ってしまので、不適切な関係を清算することができなくて悩んでいる訳で。
分かってても出来ないから悩んでるのに…。
そんな感情が頭を支配してしまった私は、無意識のうちに自分でも信じられないほどの大声で、友梨に言い返してしまっていた。
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