壁の向こう

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「そんなこと…、あなたに言われなくても分かってるわよ! 分かってるけど、それができないから困ってるんじゃないの! 女だからって勝手に低く見られて、見返してやろうって焦ってミスして、さらに見下される…。 頑張って出世したと思ったら、会社では陰口言われて、簡単な仕事しか振られなくなって…。 今は慕ってくれてる部下だって、いざとなったら何人が私の味方になってくれるのか…。 でもこんな今の私を唯一認めてくれるのは、彼だけなの。 彼しかいないのよ! …私だって辛いのよ」 私もいつしか涙声になっていた。 それに気づいたのか、友梨は一転して落ち着いた優しい声で語りかけてきた。 「お姉ちゃん? 周りの環境が上手くいってないのって、それ全て他人のせいなの?お姉ちゃんにも“ちょっとは”原因があるんじゃないの? それだったら、まずお姉ちゃん自身が変わらないと、環境は変わらないよ? 自信満々に生きてきたお姉ちゃんが、今いろんなことに自信を無くしてて、いろいろ上手くいってないのは、なんとなく気づいてる。 これでもたった一人の妹だからね? でも上手くいかないのを何時までも周りの人のせいにしてたら、なんにも変えられないよ?」 「うるさい!知ったようなこと言わないで!」 優しく語りかけてくれる友梨に、私はまだ感情をコントロールできずに辛く当たってしまう。 「お姉ちゃん、私がまだ子供の時に教えてくれたじゃん。 勉強や運動が苦手な私に、“やったこともないのにできないって言っちゃダメだ”って。 やった人にだけ、塀を乗り越えた人にだけ、見える景色があるって。 お姉ちゃん、自分自身で今の環境を変えようと頑張ってみたことある? 小学生の時から、あんなに天上天下唯我独尊的に生きてきたのに、自信満々すぎて空回りして、同僚から“空気読めない”って避けられたり、同期の男の子に出世レースで差をつけられりしたからって、他人のせいにして勝手にいじけちゃって。 そして挙句に、周りへの当てつけのように妻子持ちのオトコと付き合うなんて…。 これだけは言いたくなかったけど、やっぱり言わせて。 お姉ちゃんはバカだよ!」
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