縋る

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友梨と喧嘩した翌日。 友梨からRINEのメッセージが届いた。 『ちょっと言い過ぎた。ごめん』 メッセージはシンプルにそれだけ。 ダラダラ長文を書かないのは、彼女の性格。言い訳みたいにああだこうだ書くのは、日頃から彼女は好まない。 間違えてたこととか、自分の方が悪かったことは、すぐ反省して素直に謝れる子だ。 一方の私。気の強さが災いしてか、積極的に自分の非を認めることなんてできないし、認めたとしても矮小化したがる傾向があって、何かと言い訳しがち。 要は“謝ったら負け”みたいな感覚。 会社でうっかり耳にしてしまった、陰で男連中が呼んでいた私の蔑称は“デモデモダッテちゃん”。 『でも、そんなのおかしくないですか?』 『だってこの前の会議で部長が言ってたじゃないですか!』 …まあ、舐められないためとはいえ、こんな感じて日々仕事してたら、陰でそう言われるのもやむを得ない。 自分の悪いところだとは、自覚はしている。 で。 その性格の悪さはここでも発揮され、この友梨からのメッセージを読んでもまだ、私は素直に謝りたくなくて、既読だけ付けて返事は返さなかった。 人に後ろ指さされる不適切な関係だと分かってはいても、田原くんは、今の私にとって“必要な”人でもある。 いずれ別れた方がいいのは理解(わかっ)ているけど、そのタイミングを決めるのは自分であって、友梨に言われて決めることじゃない…とかなんとか。 …って、こういうところだぞ、私。 でも、不倫してることを友梨に謝るのは、私的に違うと思う。 妹だろうと、これは譲れない。少なくとも友梨に直接迷惑をかけている訳じゃないし。 ただ、謝るとしたら、売り言葉に買い言葉とはいえ、せっかく来てくれた友梨を追い出して帰らせてしまったことは、謝った方がいいかな…? でも、あの子、姉に向かってバカって言ったし…。 なんてウダウダ考えていたら、返信するタイミングを逸してしまっていた。 すると三時間後に、友梨から次のメッセージが届いた。
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