縋る

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“またご飯作りに行くよ” この前のへの私の回答を求めるでもなく、さっきの既読無視を責めるでもなく。 ケンカ中とは思えない、至って普通の内容。 ただ、最初のメッセージから次のメッセージまで三時間も空いたのには、友梨の中にも、私に対する葛藤や、既読無視への腹立たしさがあったんだと思う。この空白の時間は、彼女なりの冷却期間だったのかもしれない。 “流石に何か返事を返さなきゃ…” 続けて二度目の既読無視は、妹とはいえ流石にマズいので、返事を返そうとRINEの返信欄にカーソルを合わせるけど、そこで何を書くかで悩んで止まってしまった。 とりあえず今の自分の気持ちを伝えるべきかと、思うままにポチポチと打ってみたけど、長々と打ったあとに読み返してみると、何だか私が逆ギレして追い返したことを“私だけが悪いんじゃなくない?”的な言い訳してる格好になっていたので、慌てて全部削除。 その後も思うままにいろいろ書いてみたけど、今度は“私のキャラに合わない”とか、“妹相手に堅苦し過ぎない?”なんて考え出したらドツボにハマってしまい、迷った挙げ句、最終的にはシンプルに、『ごめん』の一言だけ入力して送信した。 --- 友梨とのやりとりから数日後。 昼休憩に会社近くの定食屋で部下の坂口と二人で日替わり定食を食べていると、テーブルの上に裏返して置いていたスマホが“ブブッ”と短く揺れた。 “友梨かな?” あの私の返信以降、友梨からリアクションのメッセージは来なかった。 来なかったことが少し腹立たしくも思ったけど、再び説教されることがなかったということでもあり、少しホッとしていたのも事実。 でも、やっぱりメッセージが来たら嬉しいかな?なんて友梨への複雑な想いを抱えながらスマホを手に取ると、そこに浮かんだポップアップは友梨からのRINEのものではなく、田原くんから届いたキャリアメールの着信を知らせるものだった。
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