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「山田くーん、ちょっと」
妹の友梨とケンカしてから二週間ほど経ったある日の午後。
チーム内のミーティングを終えて自席に戻るやいなや、営業を統括する木下部長が私を呼ぶ声が聞こえた。
四十代半ばの彼は、うちの会社で私に辛く当たる男性の筆頭。
熱血漢タイプでガーッ怒るけど後はカラッとしてるというタイプではなく、ネチネチと蛇のようにしつこく、いつまでも延々と絡んでくるタイプなので、私としても仲良くしたい相手ではない。
無表情で短く返事をすると、心の中の顰めっ面を悟られないよう口を真一文字に結んで部長の前に進み出た。
こうして呼びつけられる時は大抵碌なことじゃない。
部長は私が目の前に立ったのを確認すると、それまで持っていたタブレットをデスクの上にドンッと置くと、私の方に向け、周りの皆に聞こえるような声で話し始めた。
「これ見てよ。
なんだよ君のチームのこの成績は。
もう第二四半期も半分終わろうかというのに、目標に大きく未達じゃねえか。これで本当に中間時点で達成率50%超えられる?
俺は優しいから、君のような女のマネージャーでも成果が出るように、簡単ですぐ成果の出そうな仕事しか振ってないのに、こんなんじゃ困るよ。
俺の顔を潰さないでくれるかなぁ」
部長が見せたタブレットには、私のチームの月ごとの営業目標と、実際に今期に稼いだ収益額とが月別にグラフ形式で表示されていた。
前回決算から四ヶ月半経っているので一年間の目標の30〜40%の達成率が求められるところ、私のチームはまだ20%しか達成できていない。
他に二つある営業チームは、どちらも40%どころか50%近くまで目標を達成しているので、私の率いるチームが大きく出遅れているのは明らかだった。
ちなみに、田原くんの率いるチームはすでに半期の目標である達成率50%に大きく迫る49%と、今期も絶好調だ。
さすが弊社営業部のエースと呼ばれるだけのことはある。
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