紫煙の中で

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些細なことかもしれないけど、そんな彼の行動が、いや、彼にそうさせる“原因”を思うと、いつものことながら、胸がギュッと締め付けられる。 しばらくすると、出て行った時は反対の順番でドアの開け閉めの音が聞こえ、彼が寝室に戻ってきた。 そして無言のまま私の横に立つと、私の肩を優しく叩いた。 寝たフリしてるとも知らずに。 いや、知ってるのかもしれない。 ま、どっちでもいいけど。 「起こしてごめん。帰るから…」 さも、いま目が覚めたかのように振る舞って、私は布団から顔だけ出し、彼に向かって無言で頷いた。 “謝るのは起こしたことだけ?” そんな皮肉を頭の中で彼にぶつける。 当然そんなことは言えないけど。 ベッドの中の都合のいいオンナが頷いて満足したのか、彼は暗闇の中でもわかるくらいにホッとした表情を浮かべた。 いや、本当は彼の表情なんて見えてなかったかもしれないけど、間違いなく「をしていたであろうと確信はしている。 それが証拠に、彼は余韻もへったくれもなく、寝室を後にすると小走りで玄関に向かい、足早に部屋を出て行ってしまった。   --- 「ドアの鍵、締めなきゃ…」 目が覚めてから初めて声に出して呟く。 彼の帰った後、ベッドの中でしばらくぼーっとしていたけど、彼が出て行ったあと、玄関の鍵が開けっ放しなことに気がつき、のっそりと身を起こす。 いつもなら彼が帰る時は玄関まで見送りに出ていたから、そんな不用心なことはしなかったけど、今夜は見送りに出なかったので、仕方ない。 ゆっくり立ち上がり、部屋の明かりをつけ、フラフラとした足取りで玄関に向かって鍵とチェーンをかけ、またフラフラとベッドに戻る。
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