63人が本棚に入れています
本棚に追加
でも。
彼が凄いマネージャーだということは認めることはやぶさかではないけど、私だって負けてはいないはず。学歴だって劣ってないし、社内資格試験の成績だって常にトップクラスで、彼よりも高得点をとった資格試験もある。
なので、ちゃんと仕事も振ってもらえて、色眼鏡で見ずに正当に評価してもらえれば、私だって彼みたいに“エース”と呼ばれるくらいは、仕事もできるはずだ。
…なんてまたいつもの悪いクセが出てしまった。
“女だから”を理由にされると、冷静ではいられない。自分の至らなさよりも、頑張っている自分が報われないことの方がどうしても許せなくなってしまう。
そんなことを頭の中で考えていると、突然、先日の妹の顔がフラッシュバックしてきた。
“お姉ちゃんはバカだよ。
また他人のせいにしてさ”
あの妹の友梨の一言は私にとってかなりトラウマになっているらしい。
ただ今は仕事中だ。
しかも部長に怒られている真っ最中。
脳内にまで出てくるようになった友梨を頭を振って追い出し、部長の方に意識を集中する。
---
「…ていうかさあ。山田君、俺の話聞いてる?」
上の空で話を聞いてなかったのはバレていたようだ。
「は、はい。聞いてます聞いてます!
早急にチームミーティングを行い、問題点を洗い出して…」
「ふん。そんな普段からやって当然のことを今ごろ言ってもさ…。
ていうか、君は気づいていないかもしれないけど。
あ、俺は君が…無能…とまでは言わんよ?
でも君が俺以外の周りのヤツに信頼されてないから、君に仕事が振れなくて、代わりに田原マネージャーのチームにどんどんタスクが振られているって知ってた?
田原とは君とおんなじ広告企画チームのライバルなんだから、悔しく思わないと。
てか、これを悔しく思わないんなら、お前もうこの仕事、辞めろ」
そう言うと、“後は自分で考えろ”とばかりに、まるで犬を追い払うかのごとく、手を振って木下部長はどこかに行ってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!