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思ってた以上にガッツリ叱られた。
仕事で成果が上がっていない以上、そのチームの責任者として責められるのは当たり前。
それは男女関係なく、マネージャーとしては正当な評価。
でも“女性だから仕事できないだろ”って色眼鏡で見られているのは、やっぱり納得いかない。
気持ちが荒ぶり、冷静さを失いそうになっていた私は、そのまま自分のデスクに戻るのはマズいと考え、スマホに電話がかかってきたかのように、スマホを耳に当て、それっぽいセリフを呟きながら執務室を出た。
足は自然と社屋ビルの屋上に向かっていた。
マネージャー昇格以降、何か辛いことがあった時は、屋上の元々喫煙コーナーだった大きな庇の下のベンチに座って、一人心を落ち着けることにしているんだけど、最近は週に三回はここにきているような気もする。
「流石に、今日は泣いちゃいたい気分だなあ…」
喫煙コーナーが撤去されて以降、業務中は訪れる人もほとんどいない屋上。真夏の日中。エアコンのない屋上に来ようなんて人は、まずおらず、この時間も誰もいなかった。
私は独り占めしたベンチに浅く腰掛けて足を思いっきり投げ出すと、大きなため息混じりにそう呟く。
この前、マンションに来た妹に道ならぬ恋を窘められた悔しさで思いっきり泣くまで、大人になってから泣くことなんてなかった。
でもこの前思いっきり泣いたことで、どうやらそのタガが外れてしまったらしく、悔しいことがあるとすぐ泣きそうになってしまう。
“悔しいと思えないなら、仕事辞めろ”
さっきの部長の言葉が、頭の中で何度もリフレインするうちに、次第に鼻の奥がツーンとしてき始めた。
とはいえ、今は誰もいないとはいえ、屋上といったオープンなスペースでメソメソ泣くのは、流石に自分のプライドが許さない。
グッと歯を食い縛り、それ以上、得体の知れない何かが込み上げてくるのを、屋上の片隅で私は必死で食い止めていた。
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