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私のチームの新人、坂口裕美子からだった。
単刀直入な文面を読んで動揺した私は、慌てて手帳型のカバーを閉じ、スマホをバックの中に乱暴にしまって見なかったことにする。
どういうこと?なんで坂口が?
私は背筋に冷たいものが走るのを感じた。
もしかしてバレたのかな?
でもその辺はお互い慎重にやってたし…。
ここで一人で考えていてもしょうがない。
このままに既読スルーしておく訳にもいかないので、 少し間を置いてから坂口に直接電話をかけてみることにした。
「さっきのRINEの意味がわからないんだけど?」
肯定も否定も今はしない。
向こうの出方を探るため、イエスノーではない、当たり障りのない聞き方をしてみた。
「すいませんっ!お休みの日に失礼だとは思ったんですが、同期の女の子経由で先輩方から、『山田マネージャーと田原マネージャーは不倫してるかもしれないから、一度確認してほしい』って言われて…
私の聞き方が直接的で失礼過ぎましたよね…」
坂口は困ったような口調で教えてくれた。坂口の同期の子は一般職も多く、私の同期や同世代の女性が大勢いる部署で働いている子も多い。
そして、総合職の子達は坂口の立ち上げた若手勉強会で田原くんと接点がある子もいる。
そんなことから、双方のマネージャーに接点のある坂口が質問役になってしまったのか。
アルプス興産の件以降、私に辛く当たるのは、もはや同世代の女性陣だけになっていた。
田原くんのと関係のネタは、恐らく、私の足を引っ張るため、陥れる材料として格好のネタだったらしい。
それで私の部下の坂口に情報収集するよう圧力をかけているのだろう。
でも坂口の話し方だと、恐らくまだ私と田原くんの不適切な関係証拠は掴んでいないはず。
第一、そもそも私たちの関係を掴んでいるのなら、こんなまどろっこしいことはせず、直接攻撃してくるはずだ。
でも火のないところに、こんなピンポイントで煙が立ったってことは、私と田原くんとの関係に薄っすらとしても気づいた人がいる可能性を示しているので、気持ちが悪いことには変わりはない。
ここは“知らない”で押し通すに限る。
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