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 今だに俺に匂いをかがせているそいつ。なんの匂いもしないのに。もしあると言っても、ただの濃いタバコの匂いだけ。 「なんの匂いがする?」 「…タバコの匂い」 「と?」 「変態の匂い」 「アハハハッ」  答えても適当に返されるので、今までより少し深く吸う。その中には早く終わらせたいと言う意味もあるのだが。コイツは俺に求めている答えがあるのだろう。そして俺がそれを答えることができるまで、始まることもなければ終わることもない。    「…っ!!」  ハッとして胸に手をついて顔を上げた。発情したアルファのフェロモンだ!頭の脳細胞という細胞が警告をあげている。マズイ、と。  体が熱くなる。肺が圧迫されて胸が苦しい。 「お前、これ…!」 「お前こんなにウブでどうやって生きてきたんだ?」  コイツは嘲笑を浮かべて、俺の脇に手を入れ持ち上げた。 「発情したアルファの匂いをむやみやたらにかいでもいいのか?」 「あっ…やめっ!!」 「お前とセックスしたがってるアルファの匂いをかげって言われたからってかいでもいいのかよ?」  後ろからパンツごとズボンを膝までずり落とされてゆく。そして向きを変えてコイツが後ろから抱きしめるような形になって、俺の体はすっかりコイツの体に収まってしまった。上に持ち上がった両足の下に手を入れて、片方の手は腹にして後ろから抱かれる形になる。顔の横にあのクソヤクザの顔があってこちらを覗いている。  逆らって殴ってでも逃げたいのに、逃げれないと言うジレンマに襲われて泣きたくなる。自分がやると言ったのに…! 「うっ…あ…?」  すっかり尻が丸出しになってしまった俺のケツの穴に、手を這わせて穴のまわりを揉みだしたあの大きな手。発情したアルファのフェロモンをかいで俺も発情している。すっかり窄みも濡れてきてべちょべちょだった。手は今も周りをスリスリと触っていく。 「ほらな。濡れてるじゃないか」  目を瞑って耐えている俺の前に出された片手。その手は俺の穴…もうすっかり性器になったところから分泌された透明の液体で濡れていた。『お前はオメガなんだ』と言われているようで脱力した。体は相変わらず熱いが心臓の裏が痛い。 「突いてほしいって騒いでるぞ?俺が教えてやらなかったら道端でアルファに犯されるところだったな」 「教えるだと…?ふざけんなよイカれた奴め…!お前がそのアルファだろうが…!」  「あっ確かに。ハハハッ」 「あっ…!?」  ついに手がソコへと侵入する。耳で心臓が鳴ってるみたいだ。いじられている状況や手が目に見えないから、余計に不安になってくる。ぐいーっと入り込んだ手は浅いところでしばらく横に動いたりして弄った。どうしようもない熱がソコから脳へ伝熱する。 「もし俺以外に発情したアルファ野郎が近づいてきたらどうするんだっけ?」 「あ゛っ……」 「今みたいにボケッとしてやらせてやるのか?んっ?どうすんだよ?」  完全にズボンを下ろされた。上にきているシャツ以外は何も着ていない。いつのまにか挿っていた手が一本になり、2本になり…。湿った水の音が耳元で聞こえるようだ。濡れるなんて、こんな恥ずかしい…。 「失せ…ろ!」 「そうだ」 「うぅ…は、…」 (いや、クソッ今のはお前に…!) 「失せろって言うんだろ?意外によくわかってるな」 (クソ野郎…)  3本目だ。後ろのやつからとめどなく与えられる刺激。俺はこんなの知らない。知らなかった。 「あっ、」 「じゃあもし俺が近づいたら?」 (痛い…)  横の腕を掴んだ。俺の一回りほど太いそれは、俺よりじゃないがかなり熱を持っていた。 「う、失せろって!」 「失せろ?お前、金いらないのか?」  そして、びくりと体が硬直した。うすら笑いを続けるそいつの声がただただ恐ろしかった。そうだ、金…。俺は、俺たちには金がいるんだ。惨めだ。どうしようもなく。  腕を握る手の力を緩めた。
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