145人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
※
(ほんと、つくづく嫌になる)
車の中で資料をめくっていくそいつ。
「青木昊、26歳。あっ、歳同じだな。オメガで183cm。オメガにしてはかなり身長高いな」
「…」
オメガ…それは、あまり俺の人生において関係ないことだった。身長は高いし、オメガであるあるの美少年系なんてかけ離れている。ベータにしか見えないしずっと隠していたのに、あっさりバレた。そもそも、26にもなって女の人とも性行為したことない俺にとってはどうでもよかった。
「さっきのは子供か?まだ26だってのにやるじゃねぇか。それとも、お前オメガなら、処女じゃあねぇって可能性もあるよな」
そう言って、また嘲笑を浮かべた。その余裕そうなことったら、本当に鬱陶しい。あっちはバカにするつもりでこう言ってるのはわかっているけど、状況も状況なので変にイライラしてきた。ムカムカする。コイツは、わざわざ弟は俺が産んだんじないかと言うことを確認している。オメガ性なのをバカにされている。
はぁ、早く終わればいいのに。こんなクソヤクザと同じ空間にいるくらいなら工場の仕事をしてる方が100倍はマシだ。
「弟だ。」
「あ〜弟…タメ口かよ?」
静かにそう答えると、そいつはそう言った。アルファのフェロモンがドバッと出てきて、ずうずうしく俺に纏う。人のフェロモンの匂いなんて気にしたことも嗅ごうと思ったこともないが、ここは車の中で密室。自然とニオイが立ち込めて、俺の鼻腔をくすぐった。人を威圧させるが、どこか清々しいオレンジのような匂いがする。手で匂いを振り払って遠ざけたいけど、流石にそんな事をしたらもっと怒らせてしまうかもしれない、そう思って知らんぷりして無抵抗で過ごした。
しばらくしてまた車が止まり、小さい事務所に着いた。このヤクザ達の事務所がこんな小さいわけないので、仮の事務所なのだと判断する。そのまま事務所に押し込まれ、狭い部屋に2人きりになった。真ん中には長いテーブルがあって、上に被せられているテーブルクロスは埃をかぶっている。
そいつは向かい側の壁に体重を預け、片手には資料を持ってパラパラとめくっていた。
「父親が7600万の借金を残して蒸発。酷いな。ま、お前らが住んでた家売ったら600万は行くだろうから、7000万だけにしといてやる。」
「俺は、借金なんてしてない!」
そういうとそいつはさっきまでヘラヘラ笑っていたくせに、あからさまこめかみに皺寄せ真顔で俺を見下ろした。
「父親の責任は息子の責任ともいうだろ?それに父親がいない以上、もうお前の借金だし、返さないと俺らが困るんだよ」
また、適当にそう答えた。
「金が欲しいか?」
「…」
これから俺は臓器売買の話でもされるんじゃないか。ヤクザはヤクザだ。何らかの方法で俺の中の臓器を取っていくんじゃ…。それに、状況的にもあり得てしまう。
「そんな身構えんなよ、ほら、手ぇ出して」
「はぁ…?ん、い゛…っ!」
ドン——。そう言われ恐る恐る手を差し出しすと、その時を待っていたかのように俺の手を思いきり掴み、俺の体をテーブルに押し付けた。手は、自分の背中に回されていて動けない。2つの腕をまとめて押し付けている大きな手は、絶対に力勝負じゃ負けるだろうと思うほど力強く、自分の無力さを押し付けられる。
しまった…。そう思って、思わず目を瞑る。後ろではクツクツと笑う低音の声が聞こえ、また冷や汗をかく。今日の1日だけで何回死を意識したか。ふと、脳裏に弟の顔が浮かんできたので泣きたくなった。
いつのまにか、腕を掴んでいた手とは違う方の手が服の中に忍び込む。びっくりして、体が跳ね上がる。服の中なんて触られたことないのに、クソヤクザが。そういうことか、俺がオメガなのを利用して体を売らせるつもりなのだ。ぞわり、ぞわり。身体中をウジ虫が這い回るようだ。気持ち悪い。
やめろ!そう言いたかったのに、心身ともに疲れ果てた俺の体では何もできなかった。
「言っとくけどお前に拒否権ねぇから。それに、一回ヤらせてくれたら50万ずつ少なくしてやる。お前にとってもいいだろ?」
本当に消えたくなる。今更自らのオメガ性を呪ったってどうしようもないのに。
ボクサーパンツごと下ろされていくジーンズは、すっかり乾いている。テーブルにうつ伏せになっている俺に覆い被さったそいつ。目の前が暗くなって、泣いていないのに視線がぼやける。
いつのまにかそいつは自分のチャックを下ろし、俺のケツの穴に指を這わせた。上に来ていたパーカーを捲られていく。
「クソっ、色白だな…」
「…っぐ、」
嫌だ。そう思いながらも、これからの衝動に耐えるための心構えを立てるのも、ひたすら耐えるのも全部疲れて、力を手放した。
声が震える。緊張してドクドクという自分の心音が聞こえ、さらに追い詰められていった。
指が、中に入っている。気づかなかったが、アルファフェロモンが部屋全体に広がり充満している。それがひどくなぜか俺を熱くさせた。俺は悪くない。俺じゃなくて、コイツのフェロモンが俺のオメガ性を誘うせいで熱くなるだけ。そう言い聞かせた。尻は異物感しか感じない。
「オメガだしじきに濡れてくるから大丈夫だって、ほらいれるぞ〜」
『濡れる』その言葉が耳に入ってきてすぐに嫌悪感を感じた。自分がオメガなのを今更示されているようで、自分への嫌悪感とコイツへの蔑みでいっぱいだった。どうけアルファなんて、オメガのことを性処理にしか思ってない…。
少し穴をいじっていたそいつだが、自分のちんこをもう突っ込んでくるもんだから、それはもうしんどくて。痛くて。ぶちぶちと腸の肉が潰れていく激痛がして、泣きたくなった。見えないから分からないけど、ペットボトル以上はありそうなそれ。こんなにも痛いのに、それは少しずつ入ってきて腹がぼこりと浮き上がる。
「い゛たい…っ」
「ほら濡れてきた…と。あやば、血じゃん」
もう言葉は聞こえなくて、痛いことから目を逸らして誤魔化すのに精一杯で。中にいるコイツが少し動いた瞬間、さらに与えられる痛みに目の前が暗くなって俺は気絶した。
最初のコメントを投稿しよう!