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私達は人間でした。
しかし、君は違いました。
君は翼を持っていました。
美しい真っ白い翼は、君に空を自由に飛ぶ能力を授けました。
けれど、君は地上で暮らす私達の方へ関心を向けました。
土を耕し、魚を捕り、木を切って生活する私達を君はキラキラとした目で見ました。
私達は無邪気な君が微笑ましくて、畑の収穫を手伝ってもらったり、新鮮な魚の並んだ昼食に招いたり、丁寧に繕った服を着せたりしました。
物珍しげに果実を齧った君は、初めはおっかなびっくりとしていたのに、ひと口食べただけで顔を輝かせました。
夜の帳が下りてきて帰る時間になる度に、君はたいそう残念そうにしました。
しぶる君にまた明日おいで、と私達は見送りました。
異変に気付いたのはいつだっただろう。
ハッキリとそれが分かったのは、新しく繕った服を君に着せた時でした。
翼を通すために開けた穴。それが何だか広がっているように感じられました。でも、それは少し違いました。
穴は広がってはいませんでした。
君の翼が小さくなっていたのです。
君が人間の村へ来ているから、仲間から折檻をされたのではと疑いました。
けれど、違いました。
翼を小さくしていたのは、君でした。
自分の羽根を一本一本抜いていたのです。
そうすれば、いつか翼がなくなって、人間になれると思って。
そんな事をしたって人間になれるはずないのに。
私達は悔やみました。
君と私達はあまりにも違いすぎた。
近寄るべきではなかったのだ。
だから距離をとる事にしたのです。
私達は、もう君が見えません。
美しい翼も、無垢な笑顔も、見る事が叶いませんが、これで良いのです。
ああ、でも、この事を知ったら。
君はきっと泣くだろう。
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