854人が本棚に入れています
本棚に追加
「それにしても、あの子、一体何処へ逃げ隠れしてるのかしら。手負いのはずよね?」
「格好からしても遠くには行けないはずでしょ?」
「そのはずなんだけど……森の中をくまなく探したけど見つからなかったらしい」
「協力者がいるとしか思えないけど……セネルにあの子の味方なんて居ないはずよね?」
「ああ。城の者は皆、俺の配下に置いてるからアイツに付くはずが無い」
「それじゃあ、野犬にでも襲われて……」
「それにしたって遺体の一部くらいは見つかるはずでしょ? 何も無いなんておかしいわ」
ギルバートは彼女たちの口の動きを読みながら会話の内容を知れば知る程、怒りが込み上げてくる。
「本当、何処にいるのかしら」
「万が一生きている事が知られたら、困るわよね」
「ああ。それだけは避けないと」
「どこまで疫病神なのかしら、あの子は」
「やっぱり確実に殺せるよう、毒殺したら良かったのよ」
「そうね、あの子馬鹿だから毒を盛られても気付かなかったわよね」
「元はと言えば、あの殺し屋が無能なのが悪いのよ。女一人殺れないなんて」
「そうだな、それについてはこちらの人選ミスだった」
エリスの遺体が見つからない事に焦っているのは予想していたが、ここまで彼女を邪魔に思っている事には言葉も出ない。
(……一体、エリスに何の恨みがあってここまで憎むんだ?)
エリスは温厚で優しい性格の持ち主で、とても恨まれる人物とは到底思えない。
それは彼女と関わった事のある人間ならば誰もが分かる。
しかし、ギルバートもまた壮絶な人生を歩んできた一人。
理不尽に恨まれたり憎まれたりという事は身を持って体験しているので、理由はどうあれ恨みを持たれて命を狙われるのも仕方の無い事だと気持ちを切り替え、湧き上がっていた怒りを鎮めていく。
最初のコメントを投稿しよう!