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「……私の食事を運んでいた、メイドです。彼女は歳も背格好も似ていました」
「そうか……残念だが、そのメイドは犠牲になるだろう。お前の身代わりとしてな」
「そんなっ!」
「それはお前を誘き出す為でもある。お前は心優しい人間だ。自分の身代わりに誰かが殺されたと知れば、良心の呵責に耐え切れず戻って来るだろうというな」
「だとしたら、私……」
ギルバートの言葉通り、もし本当にそうなってしまったらエリスは耐えられないだろう。
「今更嘆いたところで、何も変わらない。恐らく、今夜にはそれが行われる。残念だがそのメイドは助からない」
「そんなっ、駄目です、そんな事……」
「エリス、よく聞け。セネル国にお前の味方はいない。それは分かっているな? そのメイドも、お前の味方では無かった。昨夜スープを勧めたのはそのメイドだろう? その事から踏まえると、そのメイドは知っていたのだ、薬が盛られている事を。上から言われていたのだろう。失敗すれば自分の命が危うくなる事もな」
「……でも、それでも……」
「エリス、しっかりしろ。奴らに復讐すると決めただろう? 復讐に情けは無用だ。例えそのメイドが脅されて協力させられていたとしても、実行した時点で、奴らと同罪だ。情けをかける必要は無い」
ギルバートの意見は最もだ。復讐をすると決めた時点で、敵に情けをかける必要は無い。例えそれが、どんな相手だったとしても。
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