優しく頼れる存在

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 手始めにエリスに手渡したのは人参。  これは皮を剥かなくても食べられるので、洗って適当な大きさに切るくらい簡単だと思い頼んだものの、エリスは人参を片手にすぐ近くに置いてある洗剤を取ろうとする。 「おい、何をするつもりだ?」 「え? あの、人参を洗おうかと」 「野菜に洗剤は必要無い。水でサッと汚れを落とせばいい」 「そうなんですか……すみません」  エリスの頭の中で汚れを落とす=洗剤を使うという思考らしく、ギルバートの言葉をきょとんとした様子で聞いていた。 「ギルバートさん、出来ました」 「それじゃあ次はその包丁で人参を切ってくれ。食べやすい大きさでいいから」 「分かりました」  次に、洗い終えた人参を切ってもらおうと頼むギルバート。  言われた通り包丁を手にしたエリスの手付きは危なっかしいものだった。 「……エリス、そんなに刃先を指に近付けたら危険だ。抑える手はこう、指を中にしまい込む形にした方がいい」 「こう、ですか?」 「そうだ。そうすれば指が切れる事は無いから怖くは無いだろう?」 「はい」  まるで幼い子供に教えているかのような感覚に陥るギルバートだったが、普段人と関わらない彼は誰かに物を教える機会も無いので、どこか新鮮さを感じていた。  そして、一人ならばあっという間に出来上がったであろう料理は二時間近く掛かってようやく完成した頃、初めての経験を沢山出来たエリスの表情はどこか満足そうだった。
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