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「……ギルバート、さん?」
「――そうか、それは辛かったな。トラウマはそう簡単には消せないだろうから、ふとした時に恐怖を感じる事は仕方の無い事だ。ただ、その恐怖や不安を和らげる事は出来ると思っている。もし次にそういう恐怖を感じたら、俺に言え。一人で耐える必要は無い。一人じゃ無いと思えば、いくらか気が楽になるはずだ」
エリスの話を聞いたギルバートは彼女の傍に行くと、迷う事なく彼女の身体を優しく抱き締めていた。まるで、壊れ物に触れるかのように。
彼のその行動に驚きながらも、優しい言葉をくれて一人じゃ無いと言ってくれた事が何よりも嬉しく思えたエリス。
「ギルバートさん……」
彼女の中で彼ならば大丈夫、寧ろ傍に居て貰えた方が安心出来ると思った瞬間だったに違いない。
「ありがとうございます、本当に……」
急に抱き締められて緊張から少し強張っていたエリスの身体からは徐々に力が抜けていく。
「……ギルバートさん、一緒に……眠ってくれますか?」
「……お前がそれを望むなら」
「はい、お願いします」
こうして二人は同じベッドで眠る事になり、テーブルや椅子を元に戻すと灯りを消して共にベッドへ入る事にした。
「狭くないか?」
「私は大丈夫です。けど、ギルバートさんは窮屈でしょうか?」
「いや、そんな事は無い。それじゃあ、寝るか」
「はい」
そして、お互い身体をギリギリの位置まで端に寄せたものの、ベッドがあまり大きく無いせいか触れそうで触れない微妙な距離感の二人は眠る為に目を瞑るも普段と違う状況に慣れていないからなのか、なかなか眠りにつけず、いつまでも互いが起きている気配を感じ取れた。
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