優しく頼れる存在

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「……目を瞑ると、怖いんです……大丈夫だって分かってはいるんですけど、また襲われたらどうしようって思うと、怖くてたまらなくて……」  エリスの不安は最もだ。ましてや寝込みを襲われ殺されかけたのだから。  ギルバートのように、軍に属していた経験があるならば、慣れてしまうものなのかもしれないけれど、エリスは王族の人間で常に守られる側だった。  そんな彼女が一度味わった恐怖は計り知れないだろう。  それに、例え眠れたとしても、先程のように悪夢にうなされてしまうかもしれないと思うと、目を閉じるのさえも無理なのかもしれない。  エリスの不安を知ったギルバートは彼女の方に向き直ると、そのまま身体を引き寄せて抱き締めた。 「――ッ」  突然の事に声にならないエリスは小さく息を飲む。  身体は少し強張っているけれど、そこに恐怖は無かった。あるのは緊張だけ。 「こんな事で不安が取り除けないだろうが、気休め程度にはなるだろう? 怖い事は無い。お前が眠るまでこうしていてやるから安心して眠るんだ。また悪夢でうなされたら、すぐに起こしてやるから、心配な事は無い」  ギルバートの優しさに頼ってばかりではいけないと頭では分かっているエリス。  だけど今は彼のその優しさが、暖かな温もりが必要で、それに縋るしか無かった。
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