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「ありがとうございます……。こうされると、何だか心が、落ち着きます……本当に、安心出来ます……」
抱き締められたエリスは守られているという安心感から、徐々に瞼が落ちていく。
ギルバートは彼女を優しく抱き締め、時折背中をポンポンと規則正しいリズムで叩いていた事で、いつしかエリスは眠りの世界に堕ちていった。
「……ようやく眠ったか」
再び規則正しい寝息が聞こえてきた事に安堵したギルバートもまた目を瞑り、エリスを抱き締めたままで眠りについた。
朝、小鳥の囀りと窓から射し込む光で目を覚ましたエリスは思わず声を上げそうになる。
(ずっと、こうして抱き締めてくれていたんだ……ギルバートさん)
まさかあの状態のままギルバートまで眠っているとは思わなかったエリスは驚いたものの、彼の温もりのお陰で朝までぐっすり眠れたのだと知り嬉しくなった。
(不思議だな……昨日会ったばかりの人なのに、こんなにも安心出来るなんて)
普通なら、いくら助けてくれたとは言え会ったばかりの人間相手にここまで心を許せる事は稀だろう。
しかし父親が亡くなってからこれまで、味方と呼べる者が一人も傍に居ない環境を過ごしてきたエリスにとって、ようやく現れた自分の味方。
初対面だろうと素性が良く知れなかろうと、今一番頼れるのは他でもないギルバートだけ。
その事を理解しているエリスは、未だ眠る彼に身を寄せ、彼の温もりに包まれながらギルバートが目を覚ますのを待っていた。
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