854人が本棚に入れています
本棚に追加
三十分程経って辿り着き、馬車を降りた二人はひたすら丘を登っていく。
そして、登りきった先には綺麗な景色が広がり、可愛らしい小さな花が沢山咲いている中に、豪華な墓石があった。
ここはエリスの母親が大好きだった場所で、彼女が亡くなった際、大好きな妻が愛したこの場所に墓を建ててやりたいという思いからエリスの父親が建てた墓。
そして、父親もまた、死ぬ間際、妻と同じ墓に入りたいと希望した事で、二人は同じ墓に眠っていた。
「お母様が亡くなった時、先祖が眠る代々のお墓があるのにわざわざ別の場所に建てるだなんてと周りからは色々言われていたのですが、お父様はどうしても、お母様が好きだったこの場所にと譲らなくて、周りが折れる形で、ここにお墓を建てたんです。お父様が亡くなった時も、本人がここへ入る事を希望していたのですが、だいぶ揉めたんです。継母は代々の墓へ入れるべきと言って聞かなかったのですが、私はお父様の意志を尊重したくて、どうにか説得して、ここに入れてあげる事が出来たんです。ですから、ここに来る人は限られているんです。前妻が眠るこのお墓に継母は近寄りたくないようなので、命日くらいしか来ないと思いますし……」
「そうか……しかしここは、本当に良いところだな」
「はい、そうなんです。私も幼い頃、よくお父様とお母様の三人でここを訪れるのが大好きで、ここへ来ると、すごく落ち着くのです」
ギルバートはエリスと出逢ってからというもの、彼女の笑顔を見る事はあったものの、それはどこかぎこちないものばかり。
けれど、今目の前に居るエリスの笑顔は心の底から喜びで溢れ、とても幸せそうな笑顔だったので彼女を見守る彼もまた自然と口元が緩んでいた。
最初のコメントを投稿しよう!