856人が本棚に入れています
本棚に追加
そんなエリスを前にすると、昨日船で仕入れた情報を彼女に話すのを躊躇ってしまうギルバート。
シューベルトとアフロディーテが話した衝撃的な内容を、エリスにいつ告げるべきか、それとも、自身の胸に留めておくべきか、未だに決め兼ねていた。
暫く墓石の前で過ごした二人は丘を下り、来た時に乗せて貰った御者に二時間程したら迎えに来るよう頼んでおいた事もあって、既に馬車が待機していた。
馬車に乗って市場へ戻る間、二人は御者からある話を聞く事が出来た。
「お客さん、知ってるかい?」
「何だ?」
「近々、ルビナの第二王女のリリナ様とセネル国のシューベルト様がご結婚されるという話を」
「シューベルト、王子と……リリナ……姫が?」
話を聞いた瞬間、驚きを隠せなかったエリスは思わず大きな声で二人の名を口にしては、御者に問い返す。
「ああ、我々も驚いたよ。つい先日エリス様が亡くなったという報せを受けたばかりで、葬儀も終わってまだ間もないのにと」
「……それは、確かな情報なのか?」
「ああ、俺は仲間から聞いただけで、まだ公にはなっていないが、近日中に発表があるだろうな」
「……そうか」
今はまだ、あくまでも噂という状況らしいのだけど、その情報は信頼出来るところからのものらしく、近日中に何かしらの発表があると御者は断言した。
リリナとシューベルトが実は仲が良かった事はエリスも分かっているから二人が一緒になる事に驚きは無いものの、一番驚きを隠せないのはその時期だ。
事情を知らない者や一般市民たちからすれば、前妻であるエリスが亡くなったばかりで悲しみも癒えていない中、あろう事かエリスの妹であるリリナと一緒になるという選択をするだなんて、普通では有り得ないと思うはずだ。
それにも関わらず、二人が一緒になるという情報が流れるという事は裏で話が進んでいるという事なのだ。
しかし、そうなるとルビナ国の後継ぎがいなくなってしまう。
アフロディーテは一体何を考えているのか、エリスにはそれが分からなかった。
最初のコメントを投稿しよう!