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「エリス、お前の気持ちは分かるが、今は落ち着いてくれ。悪いな、本当は迷ったんだ。この話を聞いた時、お前に話すかどうか。話せば苦しめる事になると分かっていたけれど、やはり知る権利があると思ったから話したんだ」
「……っ」
向かいに座っていたギルバートはエリスの隣に座り直すと、彼女の身体を抱き締めながら落ち着かせるように言い聞かせた。
「……理由については分からないが、俺の憶測としては、元々アフロディーテはエルロットによって後妻になるよう仕組まれたのでは無いかと思っている。お前の母が亡くなったのは流行り病で間違い無いとは思うが、それをきっかけにエルロットは自分と繋がりのある女を王族に引き入れる事で、自分の地位を何とか出来ると考えたのでは無いだろうか」
「…………っ」
エルロットはタリムが一番の信頼を置いていて、とにかく優秀な人材だった。
それは城の者なら誰でも分かっていて、エリス自身もそう思っていた。
タリムが存命の頃は優しかったエルロットも、亡くなった途端に人が変わったかのように冷たくなり、アフロディーテの忠実な下僕のように尽くしていたのも、今となっては二人が元から親密な関係だったからだという事なのだろう。
彼らの私利私欲の為に国王である父親が殺されただけでは無く、居場所までも奪われ、更には利益の為に嫁がされた挙句にそれすらも裏があった事を知ったエリスはもはや言葉にならず、込み上げる怒りを抑えるのに必死だった。
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