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アフロディーテとエルロットが地位や財産目当てで共謀して国王である夫のタリムを殺し、兄弟のいないタリムの後を継ぐ資格を持つ自身と血の繋がらない娘のエリスを国外へ追いやる――そこまでは分からなくも無いのだが、エリスが嫁いで次に後を継ぐ資格のある血の繋がった娘、リリナまでもシューベルトの元へ嫁がせるその意図も理解出来なかった。
「……何故、アフロディーテはリリナまでも手放すんだ……。本来ならば婿を取るべきはずだが……それをリリナが嫌がった? まあ、シューベルトはセネルの世継ぎだからあっちにしても、婿に出すのを渋るかもしれないが、セネルには第三王子もいるわけだから、必ずしも婿に取れない事も無いはずだが……」
レノアール地方の世継ぎの決まりは国王が亡くなった場合はその兄弟、いない場合は血の繋がりのある子供、それすらもいない場合、もしくは何か事情があって放棄する場合にのみ、国王の妻である王妃に決定権が委ねられるというもの。
その事から、リリナが権利を放棄した場合のみ、アフロディーテがルビナ国の全てを握る事が出来る訳で、シューベルトと一緒になりたかったリリナは上手く言いくるめられて嫁ぐ事を決めたとも考えられる。
「まぁ、アフロディーテがエルロットと再婚という選択をして新たな世継ぎを産めば済む話か……」
アフロディーテは若くしてタリムの後妻になった事もあって、まだ子を成す事は可能な年齢だった。
その事を踏まえれば何らかの理由を掲げてリリナが嫁いでも世継ぎ問題は解決出来ると納得したギルバートだったが、頭の片隅にある仮説が浮かび上がった。
「いや、もしかすると、この件にはまだ誰か、他にも関わっている者がいるのかもしれないな」
どこかしっくりこない状況にさらなる協力者がいるのかもという仮説を立てたギルバートは船に揺られながら一人眠れぬ夜を過ごしていた。
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