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初めての感情
自宅へ戻ってきてから数日が過ぎ、暫く塞ぎ込んでいたエリスにもようやく食欲や笑顔が戻りつつあった。
ギルバートの自宅は木々に囲まれた自然豊かな場所にある事もあり、人と関わる事もなく心穏やかに過ごせているのが一番大きい効果と言える。
薪割りをしていたギルバートが水分補給の為に部屋の中へ入るとエリスの姿が無く、どこへ行ったのか再び外へ出てみると、リュダに餌をやっていたらしいエリスはリュダの背を優しく撫でながら、「美味しい? 沢山食べてね」と優しく話し掛けていた。
「エリス」
「あ、ギルバートさん」
「リュダの餌やり助かるよ」
「いえ。あの、何かお手伝いする事ありますか? 薪割りは無理だけど……」
「そうだな、そろそろ昼飯の時間も近いし、川で水を汲んでくるから、先に料理の下ごしらえをしていてくれるか?」
「あ、それなら私が川へ水を汲みに行きますよ?」
「いや、いい。ついでにリュダにも水を飲ませてくるから、エリスは中で待っていてくれ」
餌やりくらいは一人で出来るエリスたが、乗ったり、手綱を握って共に歩いたりというのはまだ一人じゃ上手くリュダを扱えず、川で水を飲ませたいギルバートは自分が行ってくると伝えてエリスには料理の下ごしらえを任せる事にした。
ギルバートとリュダを見送ったエリスはキッチンに立つと、用意されている野菜を洗って切る作業に取り掛かる。
初めこそ手付きが危なかったエリスもギルバートに教えられたお陰でまともになった。
父親の死の真相を聞いてからというもの、エリスなりに心を整理した。
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