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「よし、これでいいだろう。水に濡らさないよう、気をつけるんだ。食事の支度は俺がやるから、エリスは座っていろ」
手当てを終えたギルバートは椅子から立ち上がると、エリスがやりかけだった野菜切りを再開する。
一方のエリスはというと、その場から動く事もせず、手当てされて包帯が巻かれた指を無言で眺めている。
そんなエリスを気に掛けつつも、今は何も言わない方がいいだろうとギルバートもまた、無言で食事の支度を続けていた。
それから暫くして、野菜スープと洋風のパスタが出来上がる。
食卓に並べられていく料理を前にしたエリスは、「美味しそう……」と小さな声で呟いた。
それを耳にしたギルバートの口元は微かに緩み、「エリス、食べ終わったら少し散歩に出掛けよう」と言いながら、エリスと向かい合わせに座る。
「……あの、用意してもらって、すみませんでした。」
「構わない。気にするな。それよりも早く食うぞ」
「はい。いただきます」
こうして二人は食事を始め、徐々にエリスの表情が和らいでいくのをギルバートはホッとした様子で眺めていた。
食事を終えて片付けを済ませたギルバートは、リュダの元に居たエリスに声を掛ける。
「片付け終わったし、そろそろ出掛けるか」
「はい」
食事中は時折笑顔を見せていたエリスだが、やはり一人になると色々考えてしまうのか、またしても表情が暗く元気も無い。
そんな彼女を元気づけたいギルバートはどうすればいいのかを考えるも、良い案が思い浮かばずこちらはこちらで悩んでいた。
とにかく今は気晴らしに散歩に出掛けるのが一番だろうと、二人はリュダを連れて自宅を出発した。
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