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「エリス、今のお前は一人じゃない。俺やリュダが居る。我慢する事も無いし、一人で背負い込む事も無いんだ。苦しい時は苦しいと吐き出せばいい。辛い時は辛いと、言えばいい」
話し終えたギルバートはエリスの肩を抱くと、そのまま自身の方へ引き寄せた。
「俺をもっと頼れ。遠慮はいらない。弱い部分も、醜い部分も、どんな事でもいい。全てを俺に曝け出してくれ。俺は、お前の望む事を、してやりたい」
「…………ギルバートさん……私、もっと求めてもいいんでしょうか? 我儘を言っても、良いのでしょうか? 心にある、色々な感情を、吐き出しても、いいのでしょうか?」
「ああ、良いんだ。言いたい事は何でも言え。して欲しい事があれば、遠慮せずに言ってみろ。俺で出来る事ならばどんな事でも叶えてやる。それに、どんな醜い感情でも、お前の全てを知りたい。それを知って嫌いになる事など有り得ないから、安心しろ」
ギルバートの元へ身を寄せるようになったエリスは、本人も気付かないうちに、心のどこかで壁を作っていた。
味方のいない環境で日々を過ごしていれば、自然とそうなってしまうのかもしれない。
信じられるのは自分だけ、自分の苦しみや悲しみなんて誰にも分からないと諦めていたのかもしれない。
けれど、ギルバートのくれる言葉や行動にはいつも温かさがあった。
それを感じていたからこそ、自分の弱い部分や醜い感情を見せて嫌われてしまう事が怖かったのだ。
そして必然的に遠慮をしてしまい、一人で抱え込んでいた。
心のどこかでは、気付いていたはずなのに。
信用出来るのも、心を許せるのも、これから先きっと、ギルバート一人だけだという事に。
「……私、怖いんです! お父様が殺されたと知ったあの日から、アフロディーテやシューベルトを殺さないと気が済まなくて、夢で何度も見るんです! 彼らを手に掛ける、自分の姿を……血まみれの中で、笑みを浮かべる自分の姿を……。ここまで人を憎んだのは初めてで、それをセーブ出来ない事が、怖いんです……」
そしてエリスはようやく、今一番悩んでいた事を口にする事が出来たのだ。
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