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プロローグ
「……お義母様……今、何て?」
厚い雲に覆われ、空がどんよりとしている昼下がり。昼食を終えて自室で読書を楽しんでいた一人の女性、エリス・ルビナは突如、王妃である継母に呼ばれ、彼女の書斎へとやって来た。
そして、そこで耳を疑う様なとんでもない話を聞く事になった。
「はぁ……、何度も同じ事を言わせないでちょうだい。エリス、貴方は隣国セネルの第二王子、シューベルト・セネル氏の元へ嫁ぎなさいと申したのです」
エリスが驚くのも無理は無い。
隣国セネルというのは、遥昔に当時の王位継承者同士でいざこざがあり、以降敵対国家として互いに干渉し合わないという暗黙のルールが存在していた。
それが突然、相手国へ嫁げという命令が下ったのだから驚かない筈が無いのだ。
「あの、何故急にそのようなお話になるのですか? セネルとは昔から干渉し合わない仲ですよね? それが何故、そのような話になるのですか?」
エリスがそう、継母アフロディーテに質問をすると、彼女は心底鬱陶しそうな表情を浮かべながら、
「……エルロット、エリスに説明してあげなさい」
すぐ横に控えていた宰相のエルロット・カルードゥルに面倒な説明を一任して、自身は椅子の背もたれに寄りかかって座り直すと、優雅にお茶を飲みながらその光景を黙って見守っている。
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