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アゲハチョウによる殺人事件から程なく十ヵ月になろうという十一月二十六日の夕方、学部内のミーティングを終えて研究室に戻った柏木祐介は、スマートホンにコールバックを求める堂島警部補のメッセージが残されていることに気がついた。
「ああどうも、柏木さん、お久しぶりです。その節はお世話になりました。」
「あの事件の公判の準備、順調に進んでいるようですね」
「ええ、村上朋佳は相変わらず協力的だし、青嶋薫子の盗作の証拠もそろいました」
「そういえば、若松氏が村上さんのために腕利きの弁護士を雇ったそうですね。費用は全部自分が肩代わりすると言って」
「よくご存じですね」
「マスコミ関係の人たちが、今でも何かと教えてくれるんですよ。引き換えにコメントを求められるから、気は使いますが……。とにかく、彼が村上さんのために何かしようとするなんて、思いもしませんでした」
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