天道虫(てんとうむし)

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 健次郎が彼女に経営を任せるにあたって、サポート役を命じたのが秘書の浦上博次です。十二年間健次郎に仕えてきた人物で、健次郎の懐刀(ふところがたな)と呼ばれていました。グループの内情を熟知した彼のサポートがなければ、いくら藤井博子が有能でも、ここまでスムーズに事業を引き継ぐことはできなかったでしょう。  一方、洋次郎の長男の藤井人志は『三代目は身上(しんしょう)を潰す』という格言を地で行くような人物です。学生時代からすでに経営者としての資質を疑う声がささやかれ始めていました。健次郎が次男の洋次郎を後継者に任命した際には、決定を聞かされた重役達が思わず安堵のため息を漏らしたと噂されたほどで、洋次郎が急死した際にも、誰も彼を後継者に推そうとはしませんでした。  料理人やメイドは通いで働いていたので、火災の発生時に居合わせたのはこの三人と管理人の森田幸蔵(こうぞう)だけです。出火に最初に気づいたのは彼で、遺体の第一発見者でもあります」  堂島がそこまで説明したところで、車が現場に到着した。
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