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「俺たちがログハウスに到着して、客間でミーティングを始めたのが午後三時。この四半期の見通しについて爺さんからネチネチと突っ込まれること四時間、ようやく解放されて夕飯にありついた時には、とっくに七時をまわっていた。ま、俺があてがわれている万年赤字のお荷物会社は話題にのぼらず、この姪っ子が集中砲火を浴びせられていただけだがね。それもまた期待の裏返しってやつだ。気の毒なのはお守り役の浦上だね。爺さんの引退後はその孫にこき使われて、もうじき四十になろうってのに、独り身のままだ」
「伯父様、口が過ぎます!」
「おっと失礼。だが、俺は本気で同情してるんだぜ。なあ博子、せめて給料くらい、もっとはずんでやれよ」
「藤井社長、お気遣いは有難いのですが、私が独身なのは別に仕事が忙しいせいではありませんし、給与についても別段不満はありませんので」
浦上は特に感情を害した様子もなく、平然と答えた。
「わかったわかった。で、午後七時過ぎに、我々はディナーのテーブルについた。食事を終えるまでの時間はざっと一時間半。メインの鹿のスペアリブが最高だったよ」
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