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「はい、旦那様は鹿のスペアリブが夕食の時は、夜食にもう一本、ウイスキーと一緒に召し上がるんです」と森田が答えた。
「七十六歳で……、大変な健啖家ですね」。
「ああ、妖怪か化け物のたぐい……」
博子に睨まれて、人志は口をつぐんだ。
「夜食を運んだのはどなたですか?」
森田が手を挙げた。
「私です。料理人は通いで、その時刻には帰宅していました」
「警報器が鳴ったのは夜食を出してからどのくらいたってからですか?」
「三十分にもならないと思います」
「それで、皆さん集まって安全を確認して、それから警報器の電源を切ったんですね?」
「ああ、森田の話だと、一月ほど前にも一度誤作動したことがあって、メーカーに調べさせたんだが、結局故障は見つからなかったそうだ。で、翌日もう一度メーカーを呼んで点検させることにして、あの晩はスイッチを切ることにした。夜中に何度も起こされたんじゃかなわないからな」
「結果として、それが仇となったわけですね。その誤作動というのは夜ですか?」
柏木の問いに森田が答えた。
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