天道虫(てんとうむし)

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「いいえ、昼間、旦那様が外出なさっている時でした」 「ところで博子さん」  柏木は藤井博子のほうに向き直って声をかけた。 「何でしょう?」 「警報器が切ってあっても、健次郎氏は葉巻を吸ったとお思いに?」 「ええ、頑固な人でしたから」  柏木はしばらく考え込んでから質問を続けた。 「それで、森田さんが出火に気づいたのが午前一時半頃でしたね?」 「そうです」 「警報器が鳴らないのによく気づかれましたね」 「旦那様は葉巻をお吸いになるので、気をつけていようと思ったんです」 「なるほど、管理人室はすぐ近くだから、見回りにいらしたんですね」 「ええ、寝室の窓が炎で明るくなっていました」 「他に火をご覧になった方は?」 「いいえ」  博子らは口々に答えた。 「発見が早かったし、初期消火はうまくいったようですね。ベッドは焼けていても、そのすぐ下の床はほんの少し焦げているだけだ」と、柏木は焼け跡を確認しながら言った。
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