天道虫(てんとうむし)

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「残念なのは、寝具の不完全燃焼で一酸化炭素が発生してしまったことですね。それさえなければ、健次郎氏も逃げ出したり、助けを呼んだりすることができたはずだ……。さて、僕がうかがいたかったことは以上です。ご協力ありがとうございました」  柏木は四人に礼を言うと、堂島に話しかけた。 「堂島さん、この後はどうしましょう?」 「ぜひ、専門家としてのご意見をお聞かせください。こちらの皆さんにはそれぞれのログハウスで待機していただくことにしましょうか?」 「うーん、その必要はないかなあ。これは不運な事故であって、特に事件性はないように思いますから」 「事故、ですか……」  堂島は困惑した表情を浮かべてそう繰り返した。 「そうだ、博子さんは今回の火災に疑念をお持ちのようでしたね。よろしければお残りいただけますか? なぜ僕が事故だと判断したか、もう少し詳しくお話ししたいので」 「そいつはいい。せっかく名探偵にお越しいただいたんだ。納得がいくまで説明してもらわないとな。じゃ、俺はこれで」  人志は皮肉な笑いを浮かべてそう言うと、ゆっくりと伸びをしながら部屋を出て行った。続いて浦上と森田が去ると、博子はため息まじりに言った。
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