天道虫(てんとうむし)

19/35

7人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
「伯父が経営している会社ですが、私なら二年で売り上げを倍増させて、完全に黒字化してみせます。伯父は自分にどんな機会が与えられ、何が期待されていたか、何も理解していないんです……。皆さんは私を冷酷な人間だとお考えでしょうね。祖父が亡くなっても、涙一つ流さない。でも、私は祖父が殺害されたのだと思っていますから、犯人がいるかもしれない場所で泣くわけにはいかないんです」  柏木の目を見つめながら、博子は言葉を続けた。 「柏木先生は事故だとお考えでしたね。理由をお話しください」 「はい、ええと……、すみません、あれは嘘なんです」  柏木は申し訳なさそうにそう答えると、堂島に話しかけた。 「堂島さん、この様子だと、犯人に悟られずに済みましたかね?」 「ええ、大丈夫だと思いますよ」  堂島がうなずいた。 「どういうことでしょう?」 「今回の火災は事故ではなく、放火殺人事件です。テントウムシの死因がおかしい。堂島さん、さすがの慧眼(けいがん)ですね」 「いや、ただの勘ですから。どこがおかしいのか、私にはまったくわからない」
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加