天道虫(てんとうむし)

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「混乱していてよく覚えていないんですが、三人ともほとんど同時くらいだったように思います」 「わかりました。あとはそうだな……、博子さん、健次郎氏は何か貴重なものを寝室に置かれていませんでしたか?」 「貴重なもの、ですか……?」 「ええ、宝飾品とか」 「いいえ、何よりも実用性を重んじる人でしたから」 「美術品なども?」 「絵画やアンティークが好きだったのは祖母のほうです。その祖母が七年前に亡くなり、所蔵していた作品は、設立した財団法人に残らず寄贈し、管理を任せていました」 「そうですか……」 「あの、よろしいですか?」と、それまで二人のやり取りに耳を傾けていた浦上が口を開いた。 「はい、どうぞ」 「奥様の話が出て思い出したのですが、奥様の銀のティアラを手元に置かれていたのかもしれません」 「あのティアラを?」と博子が言った。
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