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その日の午後、森田は狩猟のために飼っているポインター犬を連れて健次郎のログハウスに入った。他の使用人には片づけが終わるまで当面仕事はないと伝えてあり、犬を引き入れても見とがめられる心配はなかった。
そのまま階段を上がって寝室に入ると、彼はジャンパーの右ポケットから小さなポリ袋を取り出し、中身の匂いを犬に嗅がせた。
「よし、捜せ!」
そう命じられると、犬は身を低くして鼻先を床に近づけ、室内を嗅ぎまわり始めた。だが、火災の後の悪臭が妨げとなっているらしく、優秀な猟犬であっても、命じられた匂いを嗅ぎつけるのは困難極まりないことのようだった。
「どうした? 見つからんのか?」
森田がいらだたしそうにそう声をかけた時、犬はふいに足を止めて顔を上げた。
「おっ」
森田が見守る中、犬は再び鼻先を下げて進んでゆき、入口の右脇の隅に置かれていたウッドチェストの前で立ち止まると、前脚を上げて獲物の発見を知らせるポインター犬特有のポーズをとった。
「そこか、よくやった!」
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